精美堂 ISO9000 審査風景その8 (第5回2000年版維持審査)
第5回2000年版維持審査
2006年11月10日(金)
出席者:主任審査員、技術専門家、社長、管理責任者、業務担当者
Fさん(技術専門家)
製紙会社勤務その後、製紙会社の薬品開発に携わりその後印刷会社に勤務
Tさん(主任審査員)
電器メーカーの品質部門にて勤務。現在はSGSの主任審査員。
オープニングミーティング
目的:
マネジメントシステムが、審査規格のすべての要求事項に適合していることを確認すること。
組織が、計画されたマネジメントシステムを効果的に実行していることを確認すること。
マネジメントシステムが組織の方針・目標を達成する能力を有することを確認すること。
審 査 員:
精美堂の店舗の確認 品川店・平塚店の2店ですね。
登録範囲は原稿の複写及び製本、マイクロ写真作成サービス提供並びにデジタルファイリンのサービス提供ですね。
社 長:
はい
審 査 員:
運用状況を見て適合性の確認をサンプルベースで見ていきます。事実による審査で文書記録、実作業の確認をもって客観的に行われます。御社のノウハウや機密情報に触れる情報に関してお聞きすることがありますが、この情報は守秘義務によって守られます。あくまでも適合審査でありますので、不適合審査ではないと言うことを理解してください。この審査でメジャーな不適合が発見された場合は登録を一時ストップする形になりますので、よろしくお願いいたします。マイナーな不適合の場合には原因の追求、是正を行ってもらいます。マイナーな不適合に関しては登録には一切影響はしません。改善の機会と捉えていただければと思います。今後の審査で引っかかる恐れのあるものがあった場合は観察事項として指摘いたします。御社の現場にて安全についてのルール、やり方がありましたら、適宜指示を願います。それと審査後の書類作成時にコピー等の協力をお願いいたします。
経営者面談
審 査 員:
毎回同じような質問になりますがよろしくお願いいたします。
ISOの取得が2000年の12月ですので、もう6年になりますね。この6年の間ISOを経営の中で、どのように役立てているか、又生かしているかを教えてください。
社 長:
顧客満足度を満たすためという部分が取得時には大きな要素になっておりました。取引先がISOを取得しており当社もその流れにあわせて動き出しました。この複写業界において日本で最初に取得するというところを目標に目指しておりました。準備に1年間をかけて内部をどのようにしてシステムを構築するかを考えました。ISOの取得は従業員の責任感を持ち仕事を行うことに非常に有効に働いたと思います。これがクレームの減少に大きな一助になりました。対外的にもISOは名刺交換の際にISOが明記してあると話がスムーズに進む事もあります。私自身も相手の会社を見極める物差しとしてISO取得の有無を見ております。ISOで外注への信頼度も上がりました。最終的にはISOの取得はこの業界の中で全国5番目の取得になりました。不景気の影響もありますが、神奈川県では当社以外に取得しているところ はありません。ISOの勉強会が開かれても、大変、面倒、お金がかかるので、動かないところがほとんどですね。会社のトップが考えてはいるが、具体的に行動に移すという決断が出来ないところが多いのが実情みたいです。
審 査 員:
あとISOの規格が難しいという問題もありますね。
社 長:
大手はISOに関しては専門の部署が処理を行うので、末端の従業員までISOの教育が行き届いていないところが多いみたいですね。経営方針の掲示場所を知らなかったり...同業者では個人情報保護法の施行に伴いISOよりもプライバシーマークの取得にシフトしている感じがいたします。プライバシーマークの審査も現在3~4ヶ月待ちという状況のようです。当社のISO取得がきっかけとなり大きな受注に結びついたのは過去に1件だけありますね。
審 査 員:
役所の仕事が増えたのではないですか?
社 長:
当社は意図的に役所の仕事は受注しておりませんので。
審 査 員:
御社では16名の従業員にISOを徹底させるために心がけていることはありますか?
社 長:
ISOで各自が常にしっかりとした責任感を持って作業を行えるようにしております。
審 査 員:
社長の思いを従業員に伝えることは?
社 長:
毎月月初めの合同朝礼時において社員全員に通達し、品質方針の唱和を行います。
審 査 員:
お客様の満足度は何をもって量っておりますか?
社 長:
納期があっても納期一杯まで納品を引っ張らない。出来次第直ぐに納品する事を徹底しております。
この時お客様より「助かった」と声をいただくことにより、その後のお客様との円滑なコミュニュケーションを行える。そしてそれをまた従業員へフィードバックしております。
審 査 員:
それでは具体的な書類を見せてください。
社 長:
平成19年度品質目標計画書、具体的行動内容の確認。
審 査 員:
マネジメントレビューはどのように行われますか?
社 長:
毎年1回9月に行います。マネジメントレビュー記録書の情報元は品質「品質マネジメント月報」「外部監査報告」「不適合報告書」「不適合品対策書」「前回のマネジメントレビュー記録」の記録を用いております。
審 査 員:
品質マネジメントレビュー記録書を元に品質方針が策定されているのですね。唱和するのは?
社 長:
品質方針を唱和します。
審 査 員:
有効性の評価はマネジメントレビューをもって行われているのですね。法規制はありますか?
社 長:
ありません。
審 査 員:
次回の維持審査はいつがよろしいですか? 基準日が4月17日で前後2ヶ月となりますが。
社 長:
希望は5月14、21、28日を希望いたします。
事務的確認事項
審 査 員:
組織人員に変更はありますか?
管理責任者:
現在17人で前回の審査時より1人増えております。
審 査 員:
登録証、ロゴマークの確認。ロゴマークは何に使われておりますか?
管理責任者:
名刺、封筒、HPに使われております。
審 査 員:
適切に使われております。JABの版下はどなたが管理されておりますか?
審 査 員:
管理責任者が管理しております。
審 査 員:
それでしたら結構です。審査報告書はどなたが管理されておりますか? また報告書を外部に出されることはありますか?
審 査 員:
報告書は管理責任者が管理しております。報告書を外部に出すことはありません。
審 査 員:
品質マニュアルの最新版は?
管理責任者:
A版です。
審 査 員:
前回の審査で指摘事項はありましたか?
管理責任者:
ありませんでした。
審 査 員:
品質マニュアル以外の文書の管理状況を教えてください?
管理責任者:
文書審査・承認管理一覧表を提示
審 査 員:
技術手順書を見せてください。
管理責任者:
作業手順書を提示人が変わっても作業手順書を見れば誰でも作業が行うことが出来ます。
審 査 員:
他の手順書関係も同様の考え方で管理されているのですね。
クレームの処理状況
審 査 員:
クレーム処理についてお聞かせください。
管理責任者:
クレームが発生すると、クレームノートに記載されます。このクレームノートは現場に置いてあります。
審 査 員:
6月に1件発生しておりますね。
管理責任者:
トレシングペーパーで複写を行わなければならないところを普通紙でコピーを行ってクレーム処理になりました。
審 査 員:
このクレームの処理はどのように行われたのですか?
管理責任者:
不適合品対策書を発行して処理を行います。
審 査 員:
クレーム以外で不適合品対策書に挙がるケースはありますか?
管理責任者:
見積書類関係のミスについては不適合品対策書をおこして処理いたします。それ以外のミスについては作業ミス・トラブルノートに内容を記載いたします。
審 査 員:
目標値の達成はどのようにはかっておりますか?
管理責任者:
品質マネジメント月報」を元に作成したクレーム、ミス・トラブルの月間の件数で目標値の達成を図っています。平塚店ではクレーム数は月間2件の目標設定になっており品川店では月間3件となっております。常に品質カードの携帯を励行し、意識向上につなげております。そして毎年目標設定のハードルを高くしております。ちなみに品川店ではミス・トラブルの件数を昨年度は15件とし今年は1件減の14件という目標を掲げております。ここで質問があるのですが、毎年件数を減らしており、最終的に0件になった場合はどのように目標を設定すれば良いでしょうか?
審 査 員:
必ず目標値を減らさなければならないものではないので、もし0件になった場合は他に何かプラスになる目標を探せば良いと思います。
作業ミス・トラブルノートがA・Bの2種類ありますが?
管理責任者:
Aの方は顧客支給品のコピー用紙のミス、原紙及びバインダー等の支給品に対する紛失、損傷又はその他、使用に適さない場合に記載するノートです。コピー用紙については月締めで顧客へ報告を行い、確認のサインをいただいております。
Bの方は自社購入品の用紙について起こしたミスについて記載するノートになっております。A・B共に数量を品質マネジメント月報に情報を寄せて対策を講じております。ここで取り上げたミス・トラブルに対しては前述したように不適合品対策書にはあげません。
審 査 員:
どのようなミス・トラブルが多いのですか?
管理責任者:
例えば1枚出力すれば良い所を3枚出力してしまう。これは機械に残る作業内容の履歴を確認しないで作業を行ってしまう為に起こるミスです。他にはファスナー止めで作業依頼が来ているものをホッチキス止めにして納品してしまった。この時はお客様に報告を行いその際に現状の状態で引き取るとの事でしたので、特別採用申請書を発行して処理を行いました。
審 査 員:
その時の特別採用申請書を見せて下さい。
管理責任者:
書類の提示
社 長:
作業ミスが多いとクレームの数も多くなりますね。あとお客様の作業指示のミスというケースも多々あります。原稿に色付の箇所があり、指示にはモノクロコピーとなっているけど、確認の為に連絡を入れるとカラーで出力して欲しいなどの場合もあります。そのつどお客様には確認の連絡を入れるようにしております。
審 査 員:
進捗管理表とは何の進捗管理ですか?
管理責任者:
是正処置の進捗を管理し、終了時に消しこみを行います。
審 査 員:
誰が消しこみ作業を行うのですか?
管理責任者:
支店長が行います。
内部監査
審 査 員:
内部監査の決め事、ルールを教えて下さい。
管理責任者:
年2回6月と12月に行います。直近では6月の22、23日に実施いたしました。
審 査 員:
実施された際の記録を見せて下さい。審査は有資格者が行うことになっておりますが、確認するものはありますか?
管理責任者:
資格認定登録台帳に有資格者を記載しております。現在5名の者が内部監査員として登録されております。今回は平塚のSが品川店を、品川店のHが平塚店を監査しております。内部監査は計画を立て、チェックリストを作成して行います。チェックリストは毎回作り直しますが皆良く勉強しているので、内部監査で引っかかる者はおりません。内部監査は管理責任者の捺印をもって監査クローズいたします。
審 査 員:
内部監査は御社の決め事にしたがってきちんと行われており、品質マネジメント月報にも内部監査のトータルとしての報告がなされ反映されるのですね。マネジメントレビュー記録書を見せて下さい。
管理責任者:
マネジメントレビューの提示
審 査 員:
製品特性の監視とはなんですか?
管理責任者:
作業者が作業準備及び作業中に行う検査で、不適合発生予防の為に行います。
審 査 員:
予防処置計画書はどのように使われているのですか?
管理責任者:
今後起こるだろうと予想されるものについて予防の計画を立てて、予防処置を行います。最近の件を例にあげると、品川店でスキャナー作業時に図面の枠線が消えてしまう不具合が起こり、メーカーに確認をとった所、その時点では機械のデフォルトの設定が全画面を読み込む設定になっておらずこの設定の解除を行った。また同じく品川店でスキャナー作業時の読み込み位置のズレが起こり、これについてはソフトのバージョンアップ他様々な設定の見直しを行った。これらについて、まだ起こっていない平塚店でも今後起こりうる問題として水平展開を行い予防に努めております。
審 査 員:
昨年のマネジメントレビューの記録に記載されている品川店でのパソコンのブラインドタッチの教育を行った記録「品質マネジメント月報」が残っており、マネジメントレビューできちんとフォローされておりますので、前回までのマネジメントレビューの結果のフォローアップに品質マネジメント月報も含めてはいかがでしょうか。
購買
審 査 員:
営業についての書類はありますか?
管理責任者:
ありません。
審 査 員:
購買についての書類関係はありますか?
管理責任者:
文具や紙の購入時には注文書を用いて発注を行い、当社ではAランクと呼んでおります。下請けに作業を外注する時は社内・外注作業指示票を用いて作業指示をします。Bランクと呼んでおり、下請負契約者認定リストで評価を行い登録いたします。
審 査 員:
外注先に対しての再評価はありますか?
管理責任者:
現在はありません。
審 査 員:生産設備の評価は社長が行うのですね。機械を設置した後の保全はどのように行うのですか?
管理責任者:
保全計画表で年間の保全計画を立て実施いたします。
審 査 員:
保全計画表を見せて下さい。計測器は使われておりますか?
管理責任者:
以前はマイクロフィルム作成時に濃度計を使っておりましたが、現在はマイクロ作成の機械を廃棄しておりますので現在使われている計測器はありません。
審 査 員:
下請負契約者認定リストの中に運送業者がありますが、これまでにトラブルはありませんでしたか?
管理責任者:
ありません。
審 査 員:
送り状の控えを見せてください。
審 査 員:
生産設備のメーカーがCanon、Xerox、Ricohと様々なのですね。
管理責任者:
当社では比較の為に様々なメーカーを使い分けております。各メーカーの保守リストは機械内部に保管されております。
現場
審 査 員:
IRC3200はどれですか? 保守点検リストも併せて見せて下さい。
管理責任者:
保守点検リストの提示。
審 査 員:
現在はどのような作業を行われているのですか?
業務担当者:
150部の簡易製本を作っております。焼付けが終わりこれから表紙などをあわせて製本準備にはいるところです。
審 査 員:
表紙が厚紙になっておりますが、表紙が厚紙で作成しなければならないのはどのように分かるのですか?
業務担当者:
伝票に記載してあります。
審 査 員:
御社の仕事は全てこの伝票に基づいて動いているのですね。
管理責任者:
金額も含めて作業に関する全ての事をこの伝票へ記載いたします。
審 査 員:
現在の作業について教えて下さい。
業務担当者:
スキャナーを行っております。
審 査 員:
伝票を見せて下さい。ここでもきちんと伝票に基づいて作業が行われておりますね。
管理責任者:
ここの仕事は何万枚とありますので、原稿は客先の倉庫にこちらから取りに行っております。
審 査 員:
この伝票にはスキャナーの解像度、スキャン枚数、棚毎にCD1枚でオリジナル1枚、バックアップ1枚作成という指示ですね。原本の電子管理ですね。解像度の設定はどこで行うのですか?
業務担当者:
パソコンで解像度の設定は行います。
審 査 員:
青焼きですか懐かしい。驚きました現像液が臭わないですね。
管理責任者:
脱臭気のおかげですね。この青焼きの機械はあと2年で生産中止になります。
審 査 員:
こちらの青焼きの作業は店頭焼付製本依頼という伝票で作業が行われておりますね。管理責任者:この伝票はお客様が直接店頭にて依頼された分になります。
審 査 員:
この青カードは何に使われるのですか?
管理責任者:
青カードを添付された仕事が作業途中であること又担当者が誰なのかを識別するために用います。
審 査 員:
大量のインデックスの在庫ですね。
管理責任者:
使用頻度が高く大量の枚数が使われますので、在庫として管理しております。
審 査 員:
この赤カードはどのような時に使われるのですか?
管理責任者:
不適合品を識別する時に使われます。
伝票の確認
審 査 員:
伝票は最終検査者の欄に担当者印がないと出荷できないのですね。社内・外注作業指示票、コピー製本依頼票兼納品書を確認。社内・外注作業指示票の日付が違っております。
審 査 員:
出荷前の製品の置き場所はどこになりますか?
審 査 員:
こちらの棚に出荷まで保管されます。
審 査 員:
デジタルの最終検査の捺印欄に先ほどスキャナーをやられていた教育・訓練の記録を見せ下さい。
管理責任者:
訓練計画書で計画を立てて教育を行います。ここにAとBの2種類ありますが、訓練計画書Aは品質マニュアル・付表に変更が生じたときに行う際に、訓練計画書Bは実作業の訓練を行う際の計画を立てる際に使われます。
審 査 員:直近で訓練を行ったサンプルを見せて下さい。ここに記録されているKさんのデジタルファイリングの指導をIさんが行っておりますね。では、このIさんは指導員としての認定記録である資格認定登録台帳を見せて下さい。Iさんの指導員としての登録された記録がありませんね。
御社の品質マニュアルでは職場訓練の指導員は一年以上の経験を有しており、なおかつ店長が承認をした者でなければ指導に当たってはいけないことになっておりますね。指導員としての資格は十分にあると思いますが、資格認定登録台帳に指導員としての認定記録がありませんので、この件についてはマイナーな不適合としてあげさせていただきます。
管理責任者:
こちらのミスです。わかりました。
審 査 員:
製品出荷の際に必要な御社のルールを教えて下さい。
管理責任者:
検査を実施し契約内容確認書類の最終検査者欄に合格印がないものは出荷できません。
審 査 員:
ありがとうございました。以上をもちまして今回の維持審査を終了させていただきます。なお先程の不適合については3ヶ月以内に是正を行ってください。御社は内部監査のシステムもしっかり出来ておりますので、更なる継続的改善を行っていき業界のリーダーとしてがんばっていただきたいと思います。
本日はありがとうございました。
管理責任者感想
今回の維持審査は2000年版更新審査以後初めての維持審査でした。前回の更新審査においてこのマニュアルは完璧なものですとほめられました。ちょっと手前味噌でしたね。(笑)今回の審査は初めてマニュアルに添った、マニュアルから外れることがまったくなかった一日でありました。マニュアルにはこう書いてありますが、書類は何処にありますか。それはマニュアルの記入通りに記録されていますか? いままでこの6年間、審査においてマニュアルからかけ離れて独自の考えを展開した審査員ばかりでした。今回は不適合事項も納得するものであった。これほどの審査員がSGSにいたとは本当に驚きでした。このような主任審査員に審査を受ければISO審査もさほど苦痛ではありません。今まで、審査員をこれほど褒めたのは初めてのことですかね。(笑)それほど立派でした。