ドキュメントイメージスキャナQ&A 第3回
月刊 IM(Journal of Image& Information Management) 2002年3月号( 第41巻 第3号)21頁に掲載されたものを許可を得て転載したものです。 http://www.jiima.or.jp |
ドキュメントイメージスキャナQ&A 町田政彦 キヤノン電子(株) |
<第3回> |
Qラインマーカーが引かれた文字部分をきれいにスキャンしたいのですが、ラインマーカーの種類により、真っ黒になったりかすれたりします。ラインマーカーの色によってもずいぶん異なるようですが、これはどうしてでしょうか? またきれいにスキャンする方法があれば教えてください。 |
Aラインマーカーには、一般的な通常色に加え、最近では蛍光色、あるいは金銀塗料入りのものもあるようです。通常色の場合、その再現性はスキャナの光源の色でほぼ決定されます。例えば青色マーカーの場合では、赤色等、マーカーの色とは異なる光源のスキャナでスキャンすると、マーカー部分で光がうまく反射されず、黒くなったりまだらになったりします。ところが、マーカーと同色である青色光源のスキャナでスキャンすれば、その部分が真っ黒になってしまうようなことはありません。 |
青色マーカーを赤光源でスキャンした場合 |
一方、蛍光色は電子の励起状態によって発する光であり、これは通常色よりもかなり大きな光量になります。このような光はスキャナでは白色と検出されたり、あるいは発光する角度によってはスキャナのセンサーに届かず感知できず、黒色と検地されたりします。そのため、蛍光色マーカーの場合には同色の光源を用いても文字全体が薄くかすれたり、ムラになったりすることがあります。 以下、通常色の場合を前提に話しを進めます。 最近のスキャナは、ドロップアウトさせる色を赤(R)、緑(G)、青(B)の中から選択できるものが増えてきております。赤を落としたい時は、Rのみ点灯させます。緑、青を落としたい時は、それぞれG、Bのみを点灯させます。同じ要領で、ラインマーカーを引いたところを黒く潰したくなければ、赤色のラインマーカーであればRを、緑、あるいは青のラインマーカーであればそれぞれG,Bを点灯させればよいのです。ただ、ここで注意しなければいけないのは、人間の目に見える色と、実際の色は必ずしも一致しないということです。人間の目に見える色が、実際にはその色の波長だけではないということがしばしばあります。例えば水色系のマーカーでは若干赤色を加えているものも見受けられます。そういった場合、ドロップアウト機能が役立たなくなるわけです。このようなケースに対しては、ガンマカーブの調整ができるスキャナがあれば、その調整をすることによってある程度対応が可能です。また、一般的な話になりますが、ピンク、赤系あるいは黄色のマーカーは、光源がそのマーカーと類似したものであれば比較的にドロップアウトしやすく、青系、緑系のマーカーは、光源を類似色にしてもドロップアウトしにくいようです。これは緑系や青系は赤系や黄色系から比べると暗く、つまりスキャンした場合に黒くでやすいためです。 |
青色マーカーを青光源でスキャンした場合 |
最近のスキャナでは、例えば、“アダプティプ・スレッシュホールド・プロセッシング”とか“テキストエンハンスメント”と呼ばれる機能を持つものがあります。この機能を使うことによって、完全とは言い切れない場合もありますが、ラインマーカーが引かれた部分から文字だけを浮かび上がらせることができます。この機能は、通常固定された“しきい値”でイメージの画素の白か黒かを判断するものを、画素の回りの状況に合わせて最適なしきい値をダイナミックに変化させるものです。それによってラインマーカーを引いた文字を鮮明にデジタル化させることができるわけです。 また、マーカー部の文字を判読できるようにするという点だけで言えば、グレースケールや誤差拡散で読み取ることも可能です。ただその場合、文字部のシャープさが多少失われる可能性がありますし、グレースケールの場合はファイルサイズが大きくなることも覚悟しなければなりません。 |